日本で働くために、JLPTの資格をとった方が多いと思います。
資格取得は、そう簡単なことではないですよね。N1の場合、覚えないといけない漢字だけでも2000字ですから、漢字の勉強だけでも相当の負担です。
ただ、この難関を突破してN1・N2を取得したからといって、会話が流暢にできるというものではないですよね。実際の会話で思ったほど話せなかった経験が、みなさんにもあるのではないでしょうか。
私が上級者と会話をしていると、初級で学習する「形容詞」の活用と接続の間違いが目立ちます。
間違った使い方になっていることにも、まったく気づかないことがほとんどです。せっかく、N1・N2の資格までとっているのに、とても残念です。
それで、今回は、「(だ)けど」の正しい活用・接続と、4つ用法(逆説・前置き・依頼の省略スタイル・事情などの説明)、書き言葉・改まった表現の仕方のご紹介します。
深掘りして「(な)ん」の入った「んだけど」「なんだけど」「んですが」「なんですが」もご紹介しますので、最後までご一緒ください。
日本語の「形容詞」は2種類ある!
まずは、形容詞の復習です。日本語の形容詞は、2種類あります。最後が「い」で終わる「い形容詞」と「な」を付けて名詞に修飾する「な形容詞」です。このことは、みなさん知っていると思います。
「い形容詞」
・おいしい
・忙しい
・安い
・高い
・新しい
「い形容詞」が述語になっても「だ」はつきません。「おいしいだ」「安いだ」「高いだ」はありません。「い形容詞」を文型に接続する場合に、「おいしいだと思います」や「高いだけどおいしいです」にする人が多いです。正しい言い方は、「おいしいと思います」「高いけどおいしいです」です。い形容詞には、「だ」「だった」「じゃない」「じゃなかった」は使いません。
「な形容詞」
・便利な車 / 便利だ
・静かな所 / 静かだ
・にぎやかな町 / にぎやかだ
・暇なとき / 暇だ
・簡単なテスト / 簡単だ
・シンプルなドレス / シンプルだ
※「な形容詞」が述語になると「だ」がつきます。例)このデザインはシンプルだ。
「ゆうめい」「きれい」「きらい」「とくい」は、「な形容詞」です。
・有名:有名なタレント / 有名だ
・きれい:きれいなタレント / きれいだ
・嫌い:嫌いなタレント / 嫌いだ
・得意:得意な科目 / 得意だ
「(だ)けど」の使い方
「(だ)けど」は会話ではよく使う表現です。「(だ)けど」はタメ語ですが、
「ですけど」「ますけど」にすれば、丁寧な言い方になります。
「けど」と同じ意味で「けれど」「けれども」「が」もあります。
丁寧さの違いです。「けど」「けれど」「けれども・が」の順番で丁寧になります。
「(だ)けど」には、4つの用法があります。一番よく知られているのが逆説ですが、その他の用法も、
よく使う表現です。
1⃣ 逆説
2⃣ 前置き
3⃣ 省略した依頼
4⃣ 事情などの説明表現
逆説「けど」の例文
「A(だ)けどB」のは、みなさんもよく知っている表現です。
Bには、Aの逆のことや、予想とは違う展開がきます。
体にいいけど、嫌い。
体にいいですけど、嫌いです。
会いたいけど、会えない。
会いたいですけど、会えません
前置き「けど」の例文
前置きとは、本題の前に言う言葉です。本題を言う前にクッションを置く感じになります。

(雨の日、傘がない人に)
パパの傘なんだけど、使って。
いい傘じゃないんですけど、使ってください。
花柄なんですけど、使ってください。
「パパの傘・いい傘じゃない・花柄なんですけど」が前置きで、「使って」が本題です。
ちょっと今、忙しいんだけど、後にしてもらえる?
ちょっと今、忙しいんですけど、後でもいいですか?
「ちょっと今、忙しい」が前置きで、「後にしてもらる?」が本題です。
日本語には、前置き表現があります。前置きに「ん」が入る場合が多いです。
依頼の省略した「けど」表現
前置きで依頼の内容がわかるようなことには、省略した言い方もできます。もちろん、省略せずに完結してもいいです。
予約の変更をしたいんだけど…。〇
予約の変更をしたいんですけど…。〇
ここがちょっと、わからないんだけど…。〇
ここがちょっと、わからないんですけど…。〇
依頼に「~~んですけど/けれど/けれども/が、~~ていただけませんか」をよく使います。「~ていただけませんか」の前に、「ん」が入ります。「けど」だけの場合は不自然な日本語になります。
予約の変更をしたいんですけど、14時を15時にしていただけませんか。〇
ここがちょっと、わからないんですけど、教えていただけませんか。〇
「ん」がない不自然な言い方になる例文
予約の変更をしたいけど、14時を15時にしてもらえませんか。
予約の変更をしたいですけど、14時を15時にしていただけませんか。
ここがちょっと、わからないけど、教えてもらえませんか。
ここがちょっと、わからないですけど、教えていただけませんか。
事情・状況・状態などの説明 「(だ)けど…。」
上 司:来週の会議の司会お願いね。
部下:司会をするほどの日本語のスキルがなくて、自信がないんですけど…。○
上司:今、暇?
部下:取引先のメンテナンスがあって、暇ではないんですけど…、○
A:明日のスケジュールをみんなにメールで送っといて!
同僚B:ちょっと今、会議の資料作りで忙しいんだけど…。○
事情・状況・状態などの説明をする場合「ん」が入ります。やわらかさが出ますが、事情の説明が、言いわけっぽくなることもあるので注意してください。
「ん」がない不自然な言い方になる例
上 司:来週の会議の司会お願いね。
部下:司会をするほどの日本語のスキルがなくて、自信がないですけど…。✖
上司:今、暇?
部下:取引先のメンテナンスがあって、暇ではないですけど…、✖
同僚A:明日のスケジュールをみんなにメールで送っといて!
同僚B:ちょっと今、会議の資料作りで忙しいけど…。✖
「形容詞 +(だ)けど」の活用と接続
形容詞の正しい活用に「(だ)けど」を接続すれば、日本語のSkliiup完了です。下の表で活用の確認をして「(だ)けど」の接続を正しく定着させてください。
・「い形容詞」
・「な形容詞」
「い形容詞」の活用と接続
■「い形容詞」普通形
現在 | 現在否定 | 過去 | 過去否定 |
かわいいけど | かわいくないけど | かわいかったけど | かわいくなかったけど |
おいしいけど | おいしくないけど | おいしかったけど | おいしくなかったけど |
やさしいけど | やさしくないけど | やさしかったけど | やさしくなかったけど |
いいけど | よくないけど ※「よい」を使う | よかったけど ※「よい」を使う | よくなかったけど ※「よい」を使う |
■「い形容詞」丁寧形
現在 | 現在否定 | 過去 | 過去否定 |
かわいいですけど | かわいくないですけど (ありませんけど) | かわいかったですけど | かわいくなかったですけど (ありませんでしたけど) |
おいしいですけど | おいしくないですけど (ありませんけど) | おいしかったですけど | おいしくなかったですけど (ありませんでしたけど) |
やさしいですけど | やさしくないですけど (ありませんけど) | やさしかったですけど | やさしくなかったですけど (ありませんでしたけど) |
いいですけど | よくないですけど (ありませんけど) ※「よい」を使う | よかったですけど ※「よい」を使う | よくなかったですけど (ありませんでしたけど) |
■「い形容詞」+「んですけど」
「ん」を入れた表現は、日本語でよく使われます。「ん」を意識して聞きとってみてください。日本語の「前置き」「依頼」「事情・状態・状況などの説明」などの表現に幅広く使われます。
現在 | 現在否定 | 過去 | 過去否定 |
かわいいんですけど | かわいくないんですけど | かわいかったんですけど | かわいくなかったんですど |
おいしいんですけど | おいしくないんですけど | おいしかったんですけど | おいしくなかったんですど |
やさしいんですけど | やさしくないんですけど | やさしかったんですけど | やさしくなかったんですど |
いいんですけど | よくないんですけど ※「よい」を使う | よかったんですけど ※「よい」を使う | よくなかったんですけど |
■「い形容詞」+「んだけど」
「んですけど」の「です」を「だ」にすると、「んだけど」になります。「んだけど」は、親しい間で使うことができます。ビジネスで使うん本語では、「んですけど」を使います。
現在 | 現在否定 | 過去 | 過去否定 |
かわいいんだけど | かわいくないんだけど | かわいかったんだけど | かわいくなかったんだけど |
おいしいんだけど | おいしくないんだけど | おいしかったんだけど | おいしくなかったんだけど |
やさしいんだけど | やさしくないんだけど | やさしかったんだけど | やさしくなかったんだけど |
いいんだけど | よくないんだけど ※「よい」を使う | よかったんだけど ※「よい」を使う | よくなかったんだけど |
・この会社は、家から近くていいだけど、給料が安いです。✖
→この会社は、家から近くていいけど、給料が安いです。〇
・日本のうなぎはおいしいだけど、高いです。✖
→日本のうなぎはおいしいけど、高いです。〇
「い形容詞」には、「だ」「じゃない/じゃありません」「だった/でした」「じゃなかった/じゃありませんでした」は使いません。い形容詞の正しい活用に「けど」「ですけど」「んだけど」「んですけど」を接続しましょう!!
「な形容詞」の活用と接続
■ 「な形容詞」普通形 ※名詞も同じ
現在 | 現在否定 | 過去 | 過去否定 |
元気だけど | 元気じゃないけど | 元気だったけど | 元気じゃなかったけど |
便利だけど | 便利じゃないけど | 便利だったけど | 便利じゃなかったけど |
暇だけど | 暇じゃないけど | 暇だったけど | 暇じゃなかったけど |
静かだけど | 静かじゃないけど | 静かだったけど | 静かじゃなかったけど |
「ゆうめい」「きれい」「きらい」を「い形容詞」だと思っている場合
・この会社は有名けど、評判が悪い。✖
この会社は有名だけど、評判が悪い。〇
・田中さんはきれいけど、冷たい。✖
田中さんはきれいだけど、冷たい。〇
・勉強は嫌いけど、学校は好き。✖
勉強は嫌いだけど、学校は好き。〇
■ 「な形容詞」丁寧形 ※名詞も同じ
現在 | 現在否定 | 過去 | 過去否定 |
元気ですけど | 元気じゃないですけど (ありませんけど) | 元気でしたけど | 元気じゃなかったですけど (ありませんでしたけど) |
便利ですけど | 便利じゃないですけど (ありませんけど) | 便利でしたけど | 便利じゃなかったですけど (ありませんでしたけど) |
暇ですけど | 暇じゃないですけど (ありませんけど) | 暇でしたけど | 暇じゃなかったですけど (ありませんでしたけど) |
静かですけど | 静かじゃないですけど (ありませんけど) | 静かでしたけど | 静かじゃなかったですけど (ありませんでしたけど) |
■「な形容詞」+「なんですけど」 ※名詞も同じ
現在 | 現在否定 | 過去 | 過去否定 |
元気なんですけど | 元気じゃないんですけど | 元気だったんですけど | 元気じゃなかったんですけど |
便利なんですけど | 便利じゃないんですけど | 便利だったんですけど | 便利じゃなかったんですけど |
暇なんですけど | 暇じゃないんですけど | 暇だったんですけど | 暇じゃなかったんですけど |
静かなんですけど | 静かじゃないんですけど | 静かだったんですけど | 静かじゃなかったんですけど |
現在形に関しては、「なん」になります。これは名詞も同じです。
会話例
Aさん:日本のドラマは好き?
Bさん:好きけど、見ない。✖
好きだけど、見ない。〇
好きなんだけど、見ない。〇 ※説明の「ん」
Aさん:今、住んでいるとことは、便利ですか?
Bさん:便利けど、家賃が高いです。✖
便利だけど、家賃が高いです。〇
便利なんだけど、家賃が高いです。○※説明の「ん」
■「な形容詞」+「(な)んだけど」 ※名詞も同じ
「(な)んですけど」の「です」を「だ」にすると、「(な)んだけど」になります。「(な)んだけど」は、親しい間で使うことができます。ビジネスで使うん本語では、「んですけど」を使います。
現在 | 現在否定 | 過去 | 過去否定 |
元気なんだけど | 元気じゃないんだけど | 元気だったんだけど | 元気じゃなかったんだけど |
便利なんだけど | 便利じゃないんだけど | 便利だったんだけど | 便利じゃなかったんだけど |
暇なんだけど | 暇じゃないんだけど | 暇だったんだけど | 暇じゃなかったんだけど |
静かなんだけど | 静かじゃないんだけど | 静かだったんだけど | 静かじゃなかったんだけど |
書き言葉の「(だ)けど」
「(だ)けど」を書き言葉にする場合や改まった会話の場では、「が」を使います。この場合も接続の仕方は、上の図と同じです。最近は、SNSやチャットでのコミュニケーションも増えているので、参考にしてください~。
例)
・この会社は、家から近くていいだけど、給料が安いです。✖
→この会社は、家から近くていいだが、給料が安いです。✖
・この会社は、家から近くていいけど、給料が安いです。〇
→この会社は、家から近くていいが、給料が安いです。〇
・日本のうなぎはおいしいだけど、高いです。✖
→日本のうなぎはおいしいだが、高いです。✖
・日本のうなぎはおいしいけど、高いです。〇
→日本のうなぎはおいしいが、高いです 。〇
・この会社は有名けど、評判が悪い。✖
→この会社は有名が、評判が悪い。✖
・この会社は有名だけど、評判が悪い。〇
→この会社は有名だが、評判が悪い。〇
・田中さんはきれいけど、冷たい。✖
→田中さんはきれいが、冷たい。✖
・田中さんはきれいだけど、冷たい。〇
→田中さんはきれいだが、冷たい。〇
・勉強は嫌いけど、学校は好き。✖
→勉強は嫌いが、学校は好き。✖
・勉強は嫌いだけど、学校は好き。〇
→勉強は嫌いだが、学校は好き。〇
形容詞「(だ)けど」「(な)ん(だ)けど」まとめ
今日は、「けど」の用法から、「い形容詞」「な形容詞」正しい活用と接続、「けど」の書き言葉までご紹介しました。
なかなか、定着しづらい「(な)んです」の形の紹介もしました。「(な)んです」は、日本語会話で広く使われる文型ですが、学習者にとっては複雑な部分だと思います。
「(な)んです」の他の用法に関しては、またの機会に詳しくご紹介したいと思います。
今日は、用法と活用・接続を、もう一度確認していただければと思います。
「けど」「だけど」「ですけど」「(な)んだけど」「(な)んですけど」を正しく使いこなして、お仕事で活躍ください~。