気の利く学生や、心の美しい人がいます。目上の人を助けたり、手伝ったりすることが、とても上手です。私も職場で、気の利く外国人の方に、いろいろ手伝ってもらうことがあります。
ただ、このときに日本語の使い方の誤解があって、とても残念に思うことがあります。それは、「先生、私が持ってあげます」「先生、私が開けてあげます」といった言葉の誤解です。
日本語表現では、「あげる / ~てあげる」は、自分より下の人や友達、家族などの親しい関係で使います。学生の国の言葉では、問題のない言い方だと思いますが、日本語表現では使えません。「え!使っていました!」という方がいても大丈夫です。今から正しい使い方をすればいいんですから。まったく問題ありません。
今日は「あげる / ~てあげる」「差し上げる / ~て差し上げる」の使用上の注意点をご紹介します。
最後まで読んで仕事の敬語Skliiupにお役立てください。
「あげる」「~てあげる」が使える相手
先にも言いましたが、「あげる / ~てあげる」は、自分より下の人や友達、家族などの親しい関係で使います。物をあげるときや、ある行為をあげるときに使います。
🔶 あげる:「物」をあげる
・これ、あげる。
・バレンタインディーにチョコレートをあげた。
🔶~てあげる:「行為」をあげる
・洗濯をしてあげる。
・誕生日に、新しいスマホを買ってあげました。
「あげる / ~てあげる」は、目下の人や友達、家族などの親しいにとに、「利益になる物をあげる / 利益になることをしてあげる」という意味で使います。
「あげる / ~てあげる」は、親しい関係で使えますが、注意点があります。
以前、こんな話しを聞いたことがあります。

日本人の夫に「私がご飯を作ってあげている」といったら、
「恩着せがましい」と言われました。
韓国人の奥さんと日本人のご主人さんの間で「~てあげる」の表現が問題になったケースです。結果的に喧嘩したそうです。
もし、「私が毎日ご飯を作っている」と言っていたら、大きな喧嘩にはならなかったかもしれません。
では、「私が毎日ご飯を作っている」と「私が毎日ご飯を作ってあげている」の違いは何でしょう。いっしょに考えてみましょう。
「私が毎日ご飯を作っている」は私の繰り返ししている習慣を言っています。
「私が毎日ご飯を作ってあげている」は、「私が相手に利益になること・恵」をあげているという意味が加わります。「あげる」が入るだけで、微妙に違ってきます。
ご主人さんは「恩着せがましい」といいました。「恩着せがましい」は「私があなたの利益になることをしている態度」のことをいいます。
微妙なところで、ご主人さんが不愉快に感じたんでしょうね。

私も韓国人の夫に同じことして喧嘩してましたㅋㅋ
「あげる」「~てあげる」が使えない相手
みなさんは、下の例文をどう思いますか? 問題ない表現だと思いますか?
・部下が上司に: これ、あげます。
・部下が上司に: 私がしてあげます。
・学生が先生に: 私が持ってあげます。
・学生が先生に: 私が開けてあげます。
日本では目上の人やお客様などに、直接「利益(恩恵)をあげる」という表現をしないので、例文は全て「✖」使えません。ここが難しいところですね。でも、ここをしっかり理解して、Skillupしましょう!
本人がいない所で「話しの話題の人物として」は、使うことができますが、直接相手に使えません。
・部下A: きのう、社長にバレンタインディーのチョコレートをあげたら、喜んでいた。〇
部下B: Aさんもあげたの? 〇
では、どんな言い方が適切なのかというと、負い目を感じさせない負担のない言い方で表現します。これが日本の美徳的感覚なんだと思います。
・部下: これ、あげます ✖ → これ、受け取ってください/ 受け取っていただけますか
・部下: 私がしてあげます ✖ → 私がいたします/ 私がいたしましょうか/ 私にさせてください
渡すものが食べ物の場合は、「○○のお土産なんですが、召し上がってください」と言ってもいいでしょう。「あげる」の代わりに「もらってください」とお願いをする言い方を使います。最初は難しいかもしれませんが、全て慣れです。使っているうちに上手になります。
・学生が先生に: 私が持ってあげます。✖ → 私がお持ちします。
・学生が先生に: 私が運んであげます。✖ → 私がお運びします。
「~てあげる」の代わりに「お+ます形+します」の謙譲語を使えば問題ありません。「お+ます形+します」の謙譲語も、慣れれば敬語のレベルがグンとUPしますよ。
謙譲語「差し上げる」「~て差し上げる」
「差し上げる」は「あげる」の謙譲語です。みなさんもご存じだと思います。「あげる」の代わりに「差し上げる」にすれば、下記の表現が可能になると思いますか?
・部下が上司に: これ、差し上げます。
・部下が上司に: 私がして差し上げます。
・学生が先生に: 私が持って差し上げます。
・学生が先生に: 私が開けて差し上げます。
謙譲語にしたとしても、直接「差し上げる/~て差し上げる」が使えません。先に言った「お+ます形+します」の謙譲語を使いましょう。
「差し上げます」の使い分け
職場でよく使う言葉に、「こちらからお電話を差し上げます」「こちらからお電話を差し上げましょうか」という言葉があります。定番のフレーズですよね。使わない日がないぐらい使ってます。じゃ、これは??と思いますよね。
相手にとって私の電話がプラスになる、必要としている、希望している場合は、「差し上げる」を使うといいでしょう。そうでない場合は、「こちらからお電話をいたします」にするといいでしょう。
この他にも、「ご連絡差し上げます」「ご案内差し上げます」「お返事差し上げます」などがありますが、同じ基準で使い分ければいいです。区別なしに使っている現状もありますが、知識的に知っておきましょう。
この他にも、掲示板や、宣伝文などで使えます。
「無料で差し上げます」「5万円以上お買い上げのお客様に景品を差し上げております」など、間接的な表現で使えます。
「あげる」「差し上げる」が使えない理由

日本では、下の人から上の人に「物や行為をあげる、褒める、慰労するといった表現」をしないようにします。詳しくは言えないのですが、古くからの「和の精神」からきている美徳、感覚だと思います。
ときどき学生が私を褒めてくれるときがあります。学生は感謝の気持ちから言っているのだと思います。ただ、「褒める」ことが評価になってしまいます。日本語表現では、直接下の人が上の人に関して、善し悪しをいうことを避けるようにしましょう。
「先生は教え方が上手だ、先生の説明はわかりやすい、先生は丁寧に教えてくれる」などといった言葉が評価になってしまいます。このような表現は「先生のご指導のおかげで、日本語がとても上達しました」のような感謝で伝えるといいです。
慰労の表現の例として、上司が異動になったときにの例があります。「今までお疲れ様でした」と慰労の気持ちを伝える場合、なんと言ったらいいでしょうか。この場合も、感謝の言葉で慰労する気持ちを伝えます。「これまで多くのご指導をいただき、本当にありがとうございました。~部長のおかげで営業マンとしての心得を学ぶことができました。……」のような感謝で慰労の気持ちを表現します。
まとめ
日本語の敬語が難しいとよく聞きます。私もそう思います。今回のよう敬語の形としては正しくてもNG表現になることもあるので、本当に紛らわしいです。
正直なところ日本人も正しく使えていない敬語がたくさんあります。「ご注文は以上でよろしかったですか」のようなマニュアル敬語がそれです。
外国人の方は日本人を見て習うので、間違ったものを習うこともあります。なので、みなさんが間違うこともあります。
正しいことを知る機会があったら、そのときそのとき、改善していきましょう!私もできる限り敬語のSkillupをお手伝いいたします~。