企業の説明会に参加した学生から、「説明会に参加させていただき、ありがとうございます」という言い方は、間違っているのでしょうか?というメッセージがきました。
「~させていただく」に関しての質問は、『上級者の質問BSTE 3』に入ります。本当によく質問を受けます。
この質問に対して、どう答えるべきなのか本当に迷います。「説明会に参加させていただき、ありがとうございます」は、一つのフレーズのようにして、普通に使われています。それで「間違っているのでしょうか?」と聞かれると、なんとも答えづらいです。個人的には、許容範囲だと思っています。
「~させていただく」を使わないで、お礼を言うのであれば「説明会参加の機会を頂き、ありがとうございます」にすればいいでしょう。「面接の機会を頂き、ありがとうございました」などにもアレンジできます。
「~させていただく」は、使用頻度の高い言葉ですが、使う基準があいまいになっています。今日は、本来の原則から、「~させていただく」の使い方をご紹しようと思います。
それでは、しごとの日本語Skillup~~let’s go~~
使役「させる」用法
まず、「させる」からみていきましょう。「する」を「させる」にすると、使役の形になります。
使役の代表的な用法に「強制」がありますが、下の例文のような「許可の用法」があります。
例)私も一緒に行かせてください。
★いく→行かせる(使役)→行かせて
例)この案件は、私にやらせてください。
★やる → やらせる(使役)→ やらせて
使役には「許可を与える」「許可を求める」用法があるので、「させていただく」にもこの「許可」の用法が含まれます。
「させていただく」は「相手の許可」+「恩恵」の意味が含まれる。
「させていただく」は「相手の許可」と「恩恵」が含まれないと使えません。では、「恩恵」とはなんでしょうか??
読み方:おんけい
「恩恵」とは、他者や外部の環境などからもたらされる、恵み、利益、好ましい影響などを意味する表現である。「恩恵を受ける」「恩恵に与る」「恩恵に浴する」「恩恵を享受する」といった言い回しで用いられることが多い。「恩恵」は漢語由来の二字熟語であり(中国語では「恩惠」と表記される)、日本語では「恩」とも「恵み」とも言い換えられる。物質的な、金銭的な、精神的な、あらゆる種類の好ましい事柄が「恩恵」と表現できる。
引用先:Weblio辞書
「恩恵」という言葉が、わかるようでわからない言葉でした。「恵み・金銭的な利益・精神的、影響的にな好ましいこと」一言で「自分の利益」です。
なので、「相手の許可」があって、「自分が利益を得る」場合に使うというのが基準です。
では、企業訪問したときの「説明会に参加させていただき、ありがとうございます」の「参加させて」をもう一度考えてみましょう!!
この場合、参加者が説明会に参加することで「自分に利益があった」という点で、恩恵が含まれています。
では、「許可」の点ではどうでしょうか。説明会参加が「許可」を得た場でしょうか。「許可」を得た場だと思う人もいると思います。見方の違いがあってあたりまえですから。
私は、企業説明会は、参加者を集って開催するので「許可をもらう、許可を出す」という意味からは外れると考えます。
このような見方の違いから、「させていただく」の使い方が難しいのだと思います。
よく見かける「~させていただく」表現

日本語学習者が「~させていただく」の使い方に迷うのは当たり前だと思います。私は「迷う」ことすらなく堂々と間違って使っていましたから。
「それでは、ご案内させていただきます」や「12/28から1/4まで、お休みさせていただきます」などの表現を、よく聞きますよね。聞くだけでなく、私も使っていました。私以外の日本人もたくさん使っています。銀行でも、市役所でも聞きます。1日中、聞いてるような気がします。
「ご案内させていただきます」「12/28から1/4まで、お休みさせていただきます」は、「相手の許可をのらう」「そのことで自分に利益がある」という基準で考えて、どうでしょうか。
この場合は、「ご案内させていただきます」「12/28から1/4まで、お休みいたします」です。「いつも利用してくれて、恩恵をいただいている」という感謝の気持ちは、含まれますが、「相手の許可」は含まれません。
感謝の気持ちを表そうとして、ドンドン拡張した表現になっていったのでしょう。その結果「させていただく」になったのだと思います。
「させていただく」問題~
次の「させていただく」は正しいですか。○、×で答えてください。
①「すみません、コピーをとらせていただけますか」
②「それではいまから、研究発表をさせていただきます」
③「私は新郎と同じクラスで勉強させていただいた者です」
まとめ
今日は本当に難しいギリギリの線で、ブログを書きました。
「~させていただく」を使う基準として、「相手の許可」があって、「自分が利益を得る」場合に使うを意識すればいいと思います。それ以外は、「いたします」です。
「~させていただく」と「いたします」の使い方の整理できたら、ドンドン使っていきましょう!実戦あるのみですから。
・「ご案内させていただきます」✖
・「12/28から1/4まで、お休みさせていただきます」✖
・「すみません、コピーをとらせていただけますか」〇
・「それではいまから、研究発表をさせていただきます」✖
・「私は新郎と同じクラスで勉強させていただいた者です」✖
は、✖は「いたします」になります。
みなさんの日本語学習を応援しています~~。ご質問は、お問い合わせからできます~~。
参考動画:文化庁敬語おもしろ相談室3/7(2:30秒のところから見てください)
参考書籍:菊池康人著 敬語再入門 P「させていただくの過剰使用」