日本語を勉強する方々が私に「自然な日本語会話が話せるようになりたい」と言います。私は韓国語を勉強していますが、私もネイティブ韓国人のように韓国語が話せたらいいなぁ~と思っています。
ただ、母語との表現の違いや文の構成の違いなどで、外国語をネイティブのように話すことは簡単ではありません。
先日、短期留学で日本に来た20人の学生のクラスが始まりました。母国で日本語を習っているので、実際の会話の機会があまりなかった学生達です。初日の授業で、2人一組になって、お互いの自己紹介をし合いました。そのあと、自己紹介で友達から聞いたことを、他のメンバーに伝えるという活動をしました。
そのときに、「○○さんは、○○大学の1年生だと言いました」「○○さんの趣味は、アニメを見ることだと言いました」「○○さんの家族は4人だと言いました」と元気に発表してくれました。私は、私が期待した表現じゃなくて、「え!どうして??…..ここで「~と言いました」を使うの~~~ヤバイ~~」と思いながら、その発表を聞いていました。
他の人から聞いた内容・情報を、別の人に伝える表現として、20人のうち20人が「と言いました」を使いました。これは、私の授業設定のミスだと反省しましたが、
学生達が使った「~と言いました」は、その人が「言った」ことに注目した表現です。「聞いた内容・情報伝達」に注目した表現にはなりません。

「~と言いました」と似た表現に、他の人から聞いた内容・情報を伝える表現があります。「~(だ)そうです」「~らしいです」「~とのことです」などの言い方です。どれもよく使う表現ですが、これらを伝聞表現といいます。
よく考えてみると紛らわしい表現ですね。私は学生が「○○さんは、○○大学の1年生だそうです」「○○さんの趣味は、アニメを見ることだそうです」「○○さんの家族は4人だそうです」を使うと思っていたので、内心あせりました。( ´∀` )
それで今日は、引用表現の「~と言いました」の意味と使い方、「~と言いました」の誤用の原因、伝聞表現の「そうです」をまとめてみようと思います。
その場に合った使い方を身に付けて、一段とSkillupした日本語を楽しんでください~~。
引用表現「~と言いました」の意味
「と言いました」は、みなさんがもよく使っていると思います。この表現は、発話者がいて、その発話があったことを意味するものです。例えば、「上司は私に「もう、会社に来るな」と言いました。」の文でいうと、実際の発話者が上司で、発話内容が「もう、会社に来るな」です。意味は、上司の「もう、会社に来るな」という発話を引用して、その発話があったという意味です。
「~と言いました/~と言った」の直接引用・間接引用
「と」の前の部分は、「普通形」でも、「です・ます形」でも、「~しろ(命令形)」「だろう(推測)」「~ね」など、全部可能です。
・いつも、マネージャーは早くしろと言います。
・田中様が、明日来ますと言いました/おっしゃいました。
(おっしゃいました:言うの尊敬語)
・経済学者が、円安は続くだろうと言いました。
・リーダーが、進捗報告をしてほしいと言いました。
発話者が言ったそのままを「と言いました」に繋げると、直接引用になります。
発言者の言葉を普通形や命令形に言い換える表現もできます。これは間接引用です。
例)
社長の発言例)挨拶は明日行くことにしましょう。
直接引用:社長が、「挨拶は明日行くことにしましょう。」と言いました/おっしゃいました。
間接引用:社長が、挨拶は明日行くことにしようと言いました/おっしゃいました。
例)
社長の発言例)定例会議の通知をしてください。
直接引用:社長が、「定例会議の通知をしてください。」と言いました/おっしゃいました。
間接引用:社長が、定例会議の通知をしてくれと言いました/おっしゃいました。
日本語は、引用に「」を使いますが、必須ではありません。「」を使っても使わなくても引用表現になります。「」のある、なしで直接引用・間接引用を区別する意味はありません。
参考教材:みんなの日本語Ⅰ-21課
「~という」の伝聞表現
「~と言いました」の使い方に誤用が生じる理由がいくつかあります。その一つが、「~という」です。「~という」は、書き言葉で、伝聞の意味を持ちます。伝聞の「~(だ)そうです」と同じ意味です。みなさんも、新聞や小説などで、見たことがあると思います。この場合は、ひらがなを使います。
例)
今回の地震で2万人以上の死者が出たという。
彼は母国に帰って、日本語の教師になったという。
仏教が国教になって、その国は500年の間栄えたという。
「~という」を「~といいます」にすると、自分の名前や、物・場所の呼び名を言うときの表現になります。
例)
・私は○○○といいます。
・ここは博多といいます。
・これはハサミといいます。
また、「~といいます」は、言葉の言い換えのときなどにも使います。
例)韓国語では「こんにちは」を「アンニョンハセヨ」といいます。
このときの「~といいます」は、ひらがなでも、漢字でも問題ありません。個人的な意見ですが、私は「~といいます」は、ひらがなをお勧めします。ひらがなは、柔らかさを演出してくれるからです。
「~ということです」の伝聞表現
だんだん、話しが長くなってきました。簡単に書きたいのですが、ついつい長くなります。笑 できるだけ分かりやすく書こうと思ていますが…簡単ではありません。最後まで、休みながらでも読んでください~。
「~と言いました」の使い方に誤用が生じる理由の2つ目です。伝聞表現に「~ということです」があります。「~という」+「ことです」の形です。これは発言があったことをいっているんじゃなくて、伝聞です。他の人から聞いた内容・情報を伝える伝聞表現です。
この「~ということです」は「~とのことです」と同じものです。この表現は会話で使い、ビジネスで使う伝聞表現といっていいでしょう。目上の人に他から聞いた内容・情報を伝えるのによく使います。日常生活で使うことは、ほぼありません。伝聞表現の「(だ)そうです」と同じ意味です。ビジネス用だと思えばいいでしょう。
例)
・社長から電話があたんですが、遅れるので会議をはじめてくれということです/とのことです。
・みなさんに、よろしくということでした/とのことでした。
「~と言っていました」の伝言表現
「~と言いました」の使い方に誤用が生じる理由の3つ目です。「~と言っていました」は、第三者の言葉を伝言するときに使います。
「~と言いました」は発話があったことを意味して、「~と言っていました」は伝言表現です。
本当に紛らわしいです。下記の例文は自分が、伝言を聞いて、伝言を伝えるときに使います。よく使う表現ですよね。「普通形+と言っていました」になります。
例)
山田さんは、明日5時に来ると言っていました。
田中さんは、今日休むと言っていました。
自分が伝言をお願いする場合は、「~と伝えていただけませんか」と丁寧に伝言をお願いすればいいです。
参考教材:みんなの日本語Ⅱ33-課
「と言いました」「という」「ということです・とのことです」「と言っていました」のまとめ
簡単にまとめるとこんな感じです。表現が似ているので「(だ)そうです」と表現するところを「~と言いました」と表現してもしかたありません。
引用 | 発話があった | と言いました |
伝聞 | 伝聞 (書き言葉) | という |
伝聞 | 伝聞 (会話) | ということです・とのことです |
伝言 | と言っていました |
「~と言いました」の危ない使い方
「~と言いました」は、それを言った人がいる場で使うことは、ほぼありません。ただ、使うことがまれにあります。夫婦喧嘩をするときや、子供を叱ったりするときです。
例えば、結婚前に夫が「1年に1度は海外旅行に行こう」と言ったとします。でも、この発言がぜんぜん守られない場合に、そう言った夫を責めたり、問い詰めたりするのに使います。
例)
あなたは、「1年に1度は海外旅行に行こう」と言いいました。
あなたは、「1年に1度は海外旅行に行こう」と言いいましたよね。
あんた「1年に1度は海外旅行に行こう」って言ったよね。おぼえてる??
「~と言いました」は、言った人がいる場で使うと、ネガティブな要素を含んでしまいます。
「(だ)そうです」伝聞表現
「(だ)そうです」は第三者から聞いた内容・情報をそのまま伝える表現です。情報源を言いたいときは、「~によると」や「○○さんから聞いたんですが…」といった情報源を付け加えて表現できます。「伝聞そうです」はみんなの日本語Ⅱ47課で学習するので、学習するのが遅いこともあって、定着が難しいようです。
例)
天気予報によると明日は晴れるそうです。
○○さんから聞いたんですが、昨日ここで事故があったそうです。
社長の息子さんが結婚するそうです。
下記の例文の情報源は、○○さんの場合もあるし、その他の人の場合があります。
例)
「○○さんは、○○大学の1年生だそうです」
「○○さんの趣味は、アニメを見ることだそうです」
「○○さんの家族は、4人だそうです」
他者から聞いた情報を、その本人に確かめることもできます。
例)
「○○さんは、○○大学の1年生だそうですね」
「○○さんの趣味は、アニメを見ることだそうですね」
「○○さんの家族は、4人だそうですね」
「(だ)そうです」と同じ伝聞表現に「らしいです」がありますが、ニュアンスに違いが明確にあります。「らしいです」は噂や、情報元がハッキリしていなくて、その情報の信頼性が低いものに使います。「(だ)そうです」情報源や情報元がハッキリしていて、その情報の信頼性が高いものにつかいます。
「そうです」は様態を表す「雨が降りそうです/おいしそうです」と同じ「そうです」なので、これも紛らわしいですね。意味と接続する仕方が違うので、不安な方はもう一度復習をお勧めします。
参考教材:みんなの日本語Ⅱ-47課
まとめ
今日は、引用表現の「~と言いました」の意味と使い方、「~と言いました」の誤用の原因、伝聞表現の「そうです」をまとめてみました。理解を深めるのにお役に立ちましたか??
「伝聞そうです」は「様態そうです」と同じ「そうです」なので、使いやすい「~と言いました」が定着してしまった人も多いと思います。
「~と言いますた」と「(だ)そうです」の意味のつがいを明確にして、うまく使い分けてください~。みなさんの日本語Skillupを応援しています!!
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