御「お」「ご」の意味総まとめ~

「御」総まとめ 日本語勉強
「御」総まとめ

「御」は「お」とも「ご」とも読みます。「お」「ご」は名詞・形容詞・動詞に付きます。名詞の「名前」「国」「仕事」は「お名前」「お国」「お仕事」という場合があります。形容詞の「忙しい」「暇」「優しい」は「お忙しい」「お暇」「お優しい」という場合があります。動詞を名詞化させると「問い合わせる」が「問い合わせ」になって、これに「お」が付くと「お問い合わせ」になります。「お/ご」が付いていろいろな意味を持つようになります。

日本語を勉強していて「お/ご」が付く言葉と、付かない言葉で迷ったりしませんか?例えば、食べ物で「うどん」は「おうどん」ともいいます。「そば」は「おそば」です。でも、焼きそばは「お焼きそば」にはなりません。もちろん「おラーメン」にもなりません。同じ麺類ですが、「お」が付くものと、付かないものがあります。食べ物に限らず、調味料や物でも「お」が付くものと付かないものがあります。

「お/ご」が持つ意味も複雑で、同じ言葉でも、あるときは「尊敬語」としての意味で、またあるときは「謙譲語」の意味として、またあるときは「丁寧形」「美化語」などの意味を持っていています。「お/ご」の意味で、尊敬の意味じゃないものもあります。日本語の学習が進むにつれて、難しさを感じることがありませんか??

日本語会話に「お/ご」はつきものです。会話をしていて、あちらこちらに出てくるのが「お/ご」です。会話以外のコミュニケーション手段になるメッセージ・メール・手紙などでも「お/ご」はたくさん使われています。ただ、体系的に学習できる教材はない、といっていいのではないでしょうか。

初級を学習する段階では、それぼど問題に感じない「お/ご」ですが、より複雑なコミュニケーションが求められるようになると「お/ご」の難しさを感じる学習者が多いようです。

それで今日は、「お/ご」をできる限り深掘りして、ご紹介しようと思います。ちょっと長くなりますが、日本語のレベルUP~ブレシュUPにお役立てください~。

「御」表記は、漢字?ひらがな?

「御」の表記には、決まりはありません。ただ、先に紹介した「名前/お名前」「国/お国」「仕事/お仕事」「酒/お酒」「風呂/お風呂」のように「お」の付く言葉は、普通ひらがなで書きます。ただ、「お祝い/御祝」「お中元/御中元」「お歳暮/お歳暮」と言った、祝いや、贈り物をするときに「御」を使うことがあります。


「ご」が付く言葉には「御案内」「御招待」「御挨拶」「御優待」などの言葉があります。ただ、これらも「ご案内」「ご招待」「ご優待」「ご挨拶」のように、普段はひらがなで書くことの方が多いでしょう。

一般的な書き方として、一番多いのが①②の表記です。
① 「お/ご」をひらがなにする:「ご案内」「ご招待」「ご挨拶」「ご優待」「お返し」「お歳暮」
② 全部漢字にする:「御案内」「御招待」「御挨拶」「御優待」「御返し」「御歳暮」

「御」にするか「お/ご」にするかは、その目的や内容、読み手が誰かなどを配慮して使いわければいいでしょう。「御」は改まった表現になります。普段の生活、仕事では、「お/ご」を使うことが多いと言えるでしょう。

「お/ご」が付く品詞

「お/ご」は、名詞・い形容詞・な形容詞・動詞に付きます。

🔶「お名前」「お国」「お仕事」「お酒」「お風呂」「お時間」「お食事」などは、名詞に付いた「お」です。「ご自分」「ご本人」「ご家族」「ご主人」「ご年齢」「ご住所」「ご職業」などは、名詞に付いた「ご」です。ただ、すべての名詞に付くわけではありません。
例)虫・お虫✖ / 電気・ご電気✖ / 地下鉄・ご地下鉄✖

🔶い形容詞にも「お」が付きます。「お早い」「お忙しい」「お安い」「お高い」「お若い」「お優しい」「お美しい」などです。ただ、全部のい形容詞に付くわけではありません。
例)おいしい・おおいしい✖ / 長い・お長い✖ / 嬉しい・お嬉しい
い形容詞は、すべて和語なので「お」が付きます。「ご」が付くことはありません。

🔶な形容詞にも「お」「ご」が付きます。「お元気」「お好き」「お嫌い」「お得意」「お上手」
「お暇」「お綺麗」「ご親切」「ご丁寧」「ご不便」「ご不幸」「ご不自由」「ご無礼」などです。
ただ、すべてのな形容詞に付くわけではありません。
例)便利・ご便利✖ / 有名・ご有名✖ / 複雑・ご複雑✖

🔶動詞にも「お」「ご」が付きます。
① 名詞化した動詞:「お知り合い」「お支払い」「お問い合わせ」「お喜び」などは、動詞の名詞化したものに「お」がついたものです。
例)守ります→守り(名詞化)→お守り / 知り合います→知り合い(名詞化)→お知り合い
動詞の名詞化は、「ますの形」から「ます」を取ると名詞化になります。
ただ、全部の名詞化に付くわけではありません。
例)晴れる・お晴れ✖ / 曇る・お曇り✖ / 降る・お降り✖ 

② 形の決まった尊敬表現
・お/ご+ます形+になります
・お/ご+ます形+なさる
・お/ご+ます形+です
・お/ご+ます形+ください
 …など

③ 形の決まった謙譲表現
・お/ご+ます形+します/いたします/いたしましょうか
・お/ご+ます形+申し上げます
 …など

「お・ご」が付く名詞お名前/お国/お仕事/お酒/お風呂/お時間/お金/お財布/お店/お年寄り
ご自分/ご本人/ご家族/ご主人/ご年齢/ご住所/ご職業/ご送迎…
「お」が付くい形容詞お早い/お忙しい/お安い/お高い/お若い/お優しい/お美しいお寂しい
お辛い/お暑い/お熱い/お寒い/お懐かしい/お珍しい/おうらやましい
お恥ずかしい…※い形容詞は「お」のみ
「お/ご」が付くな形容詞お元気/お好き/お嫌い/お得意/お上手/お暇/お静に願います/お綺麗
お粗末/お大事/お丈夫/お幸せ/お利口…
ご親切/ご不便/ご不幸/ご不自由/ご無礼/ご熱心/ご立派ご不要/ご丁寧
ご不安/ご心配…
「お/ご」が付く名詞化動詞お気に入り/お知り合い/お悲しみ/お支払い/お問い合わせ/お喜び
お察し/お迎え/お引き立て/お楽しみ/お遊び/おしゃべり
品詞別「お/ご」の付く言葉

「ご」が付く言葉

「ご」は漢語に付けます。漢語は、中国から入ってきた「音読み」の言葉のことです。もちろん例外があります。日常生活で多く使う漢語は、「お」が付く傾向があります。「お」が付く漢語は、全体の2割ぐらいだそうです。

「ご」が付く名詞ご氏名/ご住所/ご年齢/ご生年月日/ご出身/ご職業/ご本人/ご自分
ご様子/ご自身/ご親族/ご夫婦/ご両親/ご自宅/ご気分/ご健康/ご健在
ご病気/ご入院/ご退院/ご結婚/ご卒業/ご入学/ご就職/ご予定/ご計画
ご希望/ご要望/ご経験/ご意見…
「ご」が付くな形容詞ご親切/ご不便/ご不幸/ご不自由/ご無礼/ご熱心/ご立派/ご丁寧/ご不安
ご心配/ご迷惑…
「ご」が付く動詞の敬語ご訪問なさる/ご質問なさる/ご説明いたします/ご対応いたします…
「ご」の付く言葉

「ご+漢語」の例外~「お」が付く漢語

電話は漢語ですが、「お」が付いて、「お電話」です。「時間」も漢語ですが、「お」が付いて、「お時間」です。「ご+漢語」が「お+漢語」になった例外のケースです。その数は、全体の2割ぐらいだそうです。

「お」が付く漢語は、日常でよく使うものが多く、美化語として使うものも多いです。身近な漢語が和語の感覚になって「お」が付くようになったのかもしれませんね。ちなみに、和語に「ご」が付く言葉は、「ごゆっくり」「ごもっとも」ぐらいです

「お」が付く名詞漢語お醤油/お豆腐/お味噌/お砂糖/お菓子/お寿司/お弁当/お惣菜/お野菜
お大根/お那須/お食事/お料理/お茶/お紅茶/お電話/お財布/お茶碗
お加減/お帽子/お洋服/お写真/お土産/お洗濯/お化粧品/お便所/お玄関
お教室/お役所/お宅/お席/お時間/お約束/お留守/お散歩/お誕生/お礼
お知恵/お得/お会計/お勘定/お愛想/お稽古/お行儀/お邪魔/お掃除
「お」が付くな形容詞漢語お元気/お綺麗/お上手/お得意/お上品/お大事/お大切/お利口…
「お」の付く言葉

「お」が付く言葉

「お」は和語に付けます。和語は、大和言葉ともいいます。もともとある日本語です。「訓読み」の言葉です。「山」は和語が「やま」です。「お」は、先にもいいましたが、漢語にもたくさん付きます。

おかず・お冷・おにぎり・おはぎ・お腹・おならなどは、室町時代初期頃から宮中や院で使われていた女房言葉です。「お」を付けて丁寧さを出していましたが、今では一つの言葉として使われています。

「お」が付く名詞お名前/お国/お酒/お互い/お金/お店/お数/お冷/お水/お漬物
おはぎ/おにぎり/お昼/お寺/お小遣い/お目当て/お金持ち
「お」が付く形容詞お早い/お忙しい/お安い/お高い/お若い/お優しい/お偉い
お美しい/お辛い/お苦しい/お寂しい/お暑い/お熱い/お寒い
お懐かしい/お珍しい/おうらやましい/お恥ずかしい…
動詞の名詞化されたものに付く「お」お知り合い/お悲しみ/お問い合わせ/お喜び/お遊び/お守り
お引き立て/おにぎり/おしぼり/お代わり/お取り寄せ/お勧め
「ご」の付く言葉

「ご」「お」両方とも付く言葉

-返事・-都合・-会計・-病気・-通知・-葬式・-年始・-年賀・-祝辞・-祝儀・-誕生などの言葉はどちらも使います。

使い分けに決まりがあるわけではないようですが、「ご」は、多少改まった表現、書き言葉で多く使う人が多いです。「お」も書き言葉でも使いますが、会話で多く使います。

私は以前、「ご返事」と「お返事」で迷って調べたことがあります。興味深い調査結果があったのでご紹介します。どちらを使うかは本人の判断になると思いますが、私は仕事関係のときだけ「ご返事」を使うことにしています。

返事下さり(尊敬)25,800160,000
返事いたします(謙譲1)467,0004,860,000
返事ちょうだいね(美化)7148,000
Google検索エンジンによる、オ-返事/ゴ-返事の使用数(2013.10.30調査
山田健三 奥瀬真紀 敬語接頭辞「オ-/ゴ-(御)」の使い分け原理式論 P228

「お/ご」の8つの意味

国語辞典で紹介している「お/ご」の意味を全部あげると8つありました。①~④は敬語です。
① 尊敬
② 謙譲
③ 丁寧
④ 美化語
⑤ 労い・慰め
⑥ 親愛
⑦ からかいや自嘲・ふざけの意
⑧ 本来の「お」意味がなくなって、一つの言葉になったもの

① 尊敬の意味の「お/ご」

相手又は第三者のする行為や、その人に関係すること、物、状態を表す言葉に「お/ご」を付けます。「お/ご」を付けることで、敬意を表す意味を持ちます。尊敬語の主語は、必ず相手又は第三者です。

尊敬語:相手側又は第三者の行為・ものごと・状態などについて,その人物を立てて述べ
るもの

2007年 文化庁「敬語の方針」P14から

🔶名詞の尊敬語
「住い」という名詞がありますが、意味は家(住居)のことです。「お」を付けると、尊敬の意味を持ちます。

「住いは、どこですか」を「お住いは、どちらですか」にすると敬意を含みます。
「歳は、何歳ですか」は「お歳は、おいくつですか/おいくつでいらっしゃいますか」にすると敬意を含みます。

「お/ご」を付けた場合は、全体の調和が合う言葉を組み合わせます。「どこ」は「どちら」「何歳」は「おいくつ」にします。

・リンさんのはどこですか。→リンさんのお国は、どちらですか/どちらでいらっしゃいますか。
・これは先生のですか。→こちらは先生のお履き物ですか/お履き物でいらっしゃいますか。
・今、時間いいですか。→今、お時間よろしいですか/お時間よろしいでしょうか。

「お」が付く尊敬語お名前/お住い/お宅/お歳/お仕事/お子さん/お体/お召し物/お着物お電話
お履き物/お持ち物/お荷物/お車/お姿/お顔/お留守/お話し/お人柄/お手元
お席…
「ご」が付く尊敬語ご氏名/ご住所/ご年齢/ご生年日/ご出身/ご職業/ご本人/ご自分/ご自身
ご様子/ご家族/ご親族/ご夫婦/ご両親/ご自宅/ご気分/ご健康/ご健在
ご不在/ご病気/ご入院/ご退院/ご結婚/ご卒業/ご入学ご就職/ご意向
ご意見/ご都合…
「お/ご」が付いた尊敬語(名詞・形容詞)
あ行挨拶あいさつご挨拶ま行満足まんぞくご満足
愛用あいようご愛用無理むりご無理
か行継続けいぞくご継続命令めいれいご命令
契約けいやくご契約や行用意よういご用意
貢献こうけんご貢献用命ようめいご用命
さ行参加さんかご参加約束やくそくお約束
質問しつもんご質問ら行来席らいせきご来席
使用しようご使用来泊らいはくご来泊
準備じゅんびご準備来場らいじょうご来場
た行注意ちゅういご注意利用りようご利用
提案ていあんご提案連絡れんらくご連絡
登録とうろくご登録
な行入会にゅうかいご入会
は行配慮はいりょご配慮
不在ふざいご不在
返信返信ご返信
返答へんとうご返答
仕事でよく使う動作性のある名詞の尊敬語

🔶形容詞の尊敬語
①「お/ご+形容詞 +です」の形で尊敬を表すことができます。例えば田中先生は、お忙しいです」は、尊敬語になっています。「田中先生は、ー忙しいです」は丁寧な表現です。

「お/ご+形容詞 +でいらっしゃる/くていらっしゃる」の形があります「お/ご 形容詞 です」よりも、敬意が高くなります。「田中先生はお忙しいです」は「田中先生は、お忙しくていらっしゃいます」になります

この「お/ご」 形容詞 でいらっしゃる/ていらっしゃる」は「お/ご」がなくてもいいです。「田中先生は、ー忙しくていらっしゃいます」でもいいです。

田中先生は、お上品でいらっしゃいます」「田中先生は、ー上品でいらっしゃいます」どちらも同じように使えます。

「有名」は「ご有名」にはならない言葉なので「ご有名でいらっしゃる✖」にはなりません。
有名でいらっしゃる」になります。

い形容詞は「くていらっしゃる」で、な形容詞は「でいらしゃる」の習得は、日本人も難しいです。わかっていても、口からなかなか出てきません。まずは、意識してみるところから始めてみてはどうでしょうか。

下の言葉を使って、「い形容詞+くていらっしゃいます」「な形容詞+でいらっしゃいます」を練習してみてください。

「お」が付く尊敬語お元気/お好き/お嫌い/お得意/お上手/お忙しい/お若い/お優しい/お美しい
おしゃれ/お上品…
「ご」が付く尊敬語ご健康/ご熱心/ご立派/ご誠実/ご丁寧/ご親切/ご多忙…
「お/ご」が付いた尊敬語(名詞・形容詞)

🔶動詞の尊敬「名詞化」されたものと、「尊敬の決まった形」にもの

名詞化された動詞の尊敬語
・どちらに、お出かけですか。
お気遣い頂き、ありがとうございます。
・いつも、お引き立て頂き、ありがとぅございます。
・いつからのお知り合いですか。

尊敬語の主な決まった形
お/ご+ます形+になります
・先生が話します。→ 先生がお話しになります
・先生が教室に入った。→先生が教室にお入りになりました。

お/ご+ます形+なさいます
・先生が話します。→ 先生がお話しなさいます。
・何月に結婚しますか。→ 何月にご結婚なさいますか。
※「お/ご」が付かない漢語の場合は、「なさいます」だけでいいです。
ー運転なさいます/ー手術なさいました

お/ご+ます形+です
・何を読んでいますか。→ 何をお読みですか。
・どこのホテルに泊まっていますか。→ どちらのホテルにお泊りですか。/どちらにご宿泊ですか
・お客様が待っています。→ お客様がお待ちで

お/ご+ます形+ください
・部屋のWIFIを使ってください。→ お部屋のWIFIをお使いください
・専用のアダプターを利用してください。→ 専用のアダプターをご利用ください。
・ゆっくりしてください。→ごゆっくり、おくつろぎください。
・楽しんでください。→お楽しみください。

また、「お/ご+ます形+になる」に、い形容詞の「やすい/にくい」が付いた形もあります。
「使う」は「お使いになる」が尊敬の形ですが、これに「やすい/にくい」が付くと、「お使いになりやすい/にくい」にすることができます。

お求めになる→お求めになりやすい/お求めになりにくい
 ただ今、お求めになりやすい金額になっています。 
お書きになる→お書きになりやすい/お書きになりにくい
 太いペンの方が、お書きになりやすいと思います。
お飲みになる→お飲みになりやすい/お飲みになりにくい

 こちらは、女性の方にも、お飲みになりやすい日本酒です。

② 謙譲語の意味の「お/ご」

謙譲語:「ご」は、自分が相手又は第三者にする行為や、渡すもの、関することに付けます自分を低めて、相手を立てることで、謙譲語の意味を持ちます。

例えば「私からお客様にご連絡いたします」は、「連絡する」という私がする行為に「ご」を付けます。「明日ご回答いたします」も同じく「回答する」という私の行為に「ご」を付けます。謙譲語の主語は私です。ほぼ、私以外が主語になることはありません。

謙譲語Ⅰ
自分側から相手側又は第三者に向かう行為・ものごとなどについて,その向かう先の人物を立てて述べるもの

2007年 文化庁「敬語の方針」P15から

🔶名詞の謙譲語
名詞の謙譲語には、「お電話」「連絡」「お手紙」「ご/お返事」「ご返信」「おはがき」「お礼」
「お祝い」「お土産」どがあります。もちろん、これらは尊敬語・美化語の意味にもなります。

私が相手にする電話、出す手紙・はがき、私が相手にする感謝を表す礼・祝い・土産には「お/ご」を付けます。自分のこと・物に「お/ご」を付けつのは変だと思う人もいますが、高める相手にする行為・渡す物などに「お」を付けると、謙譲語の意味になります。

ただ、「お土産」や「お手紙」を美化語として使う人も多いです。個人差はありますが、どちらにしても高める相手がいる場合は「お」が付きます。もちろん、すべての言葉に付くわけではありません。
例)(私はあなたに)昨日、お手紙をお送りいたしました。〇
  (私はあなたに)昨日、お/ご資料をお送りいたしました。✖
「資料」には、「お/ご」が普通付きません。理由としては、日常でよく使う言葉ではない、習慣的に使わない、「お/ご」がその漢語になじまないなどの理由があります。

🔶形容詞の謙譲語
形容詞の謙譲語Ⅰには、「おうらやましい」「おなつかしい」などがあります。会話中に相手や話題の人物にに「うらやましい」「懐かしい」という感情を持った場合に、「おうらやましい」「お懐かしい」といいます。私の感情が相手を高める働きをします。
例)(田中さんが、有名なスポーツ選手と結婚した)田中さんが、おうらやましです。

「ご不便」「ご不自由」「ご心配」「ご迷惑」などは、「~をかける」といっしょに使うことが多いです。この「かける」を謙譲語の形にすると「~をおかけします」になります。それで、下の例のように使うことが多いです。
・ご不便をおかけします/おかけしております。
・ご不自由をおかけします/おかけしております。
・ご心配をおかけします/おかけしました。
・ご迷惑おかけします/おかけしました。


「お辛い」「お寂しい」「お苦しい」「お悲しい」などは、私が相手の感情を察し表現する場合に使います。相手の感情を私が察した表現なので、謙譲語Ⅱの働きをします

🔶動詞の謙譲語
謙譲語は、謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱがあります。
謙譲語Ⅰは、「お/ご」が付きます。私の動作の向かう先を高めることになります。 
① お/ご+ます形+します(いたします)
例)(私はあなたを)ご案内します(いたします)。
  (私はあなたに)こちらから、ご連絡します(いたします)。
私(主語)の動作の向かう相手「あなた」を高めます。

よく、私の動作が向かう相手と聞き手が同じな場合があります。そのような時は、謙譲語Ⅰの
「お/ご+ます形+します」を「お/ご+ます形+いたします」にしても問題ありません。
例)(私はあなたを)ご案内します(いたします)。
  (私はあなたに)こちらから、ご連絡します(いたします)。

「お/ご+ます形+します」の他にも、「お/ご+ます形+申し上げます」があります。
例)ご来店のお客様に、お詫び申し上げます。
  この度はご愁傷様です。心よりお悔やみ申し上げます。

謙譲語Ⅱは、私の動作の向かう相手はなく、自分を低める、聞き手に自分の動作を丁重に言う意味になります。
例)(聞き手:部長)私は10時に出発します。→私は10時に出発いたします。
私の出発する動作は、動作の向かう相手がいませんが「いたします」を使うことで、聞き手の部長に
丁重な表現をしたことになります。

例)(聞き手:部長)はじめまして。〇〇〇と申します。
「私は○○○です」の敬意を上げた言い方が「私は○○○と申します」です。この場合は「お/ご」は付きません。

③ 丁寧と④ 美化語の意味の「お/ご」

「お/ご」は、美化語になります。言葉を美しく品のある言葉にすることができます。例えば、「近所」は「ご近所」、「縁」は「ご縁」、「弁当」は「お弁当」になります。

「お」は美化語として使われる使用頻度がとても高いです。美化語の「お/ご」の使用は、性別や、個人差があります。同じ言葉でも、「お/ご」を付ける人と、付けない人が分かれます。

女性は一般的に年齢を問わず、美化語を使うことが多いですが、男性は個人差があると思います。男性が女性と同じぐらいに「お」を使うと女性っぽい感じになる可能性もあるでしょう。私には兄がいますが、普段は「弁当」「酒」「風呂」「金」のように「お」のない言葉を使っています。

女性が一般男性の水準で美化語を使うと、男性っぽい、粗い印象になる可能性があります。どちらにしても「お」がつく言葉をたくさん知っておくと、尊敬・謙譲・丁寧・美化語として使い分けができます。「お」の美化語に慣れることで日本語のSkilupが大きく図れます!

美化語は、ラフな表現にも使えるし、「美化語+です/ます形」丁寧な表現にも使えます。
もともと「弁当」ですが、「お弁当」になります。
丁寧:今日のお弁当は、キャラ弁ですか?〇
ラフ:今日のお弁当は、キャラ弁~~~。〇
https://www.youtube.com/watch?v=9TnfHBJHSSY&t=157s

★丁寧な言い方
「先生は、お酒を召し上がりますか 」「先生、お酒をお注ぎしましょう 」〇
「先生は、を召し上がりますか 」「先生、をお注ぎしましょう 」✖
「お酒」の「お」を尊敬の意味とする人もいると思いますが、美化語として使う人もいます。これは、個人差があります。どうとらえるかは、大きな問題にはなりませんが、先生に「酒」というのは、よくありません。

★ただの美化語
お酒 、好き?」「私、お酒飲めないのよ」〇
「酒、飲む?」「おれ、酒、飲めねぇ」〇

初級の教材を見ると、「お金」「お菓子」「お祈り」「お酒」「お花見」「お風呂」「お弁当」「お寺」など、「お」が付いた形で出ています。美化語という認識ではなく、一つの語彙という認識に変わっていっているようです。

この他にも「ご褒美」「ご機嫌」などがあります。美化語の「ご」の数は、美化語の「お」の数に比べて、圧倒的に少ないです。美化語を身近な項目で分けて見ました。みなさんが知っている「お」の付く言葉はどこに入りますか?

食べ物お米/お刺身/お醤油/お豆/お豆腐/お鍋/お味噌/お砂糖/お塩/お酢/お供物//お団子/おかゆ
おつけもの/お肉/お魚/お芋/お野菜/お寿司/お雑煮/おみかん/おつゆ/お弁当/おうどん
おそば/おつまみ/お惣菜/お味… ※おソース
飲み物お飲み物/お水/お紅茶/お酒/お味噌汁/お吸い物/お薬…※おビール
お財布/おつり/お箸/お茶碗/お皿/お布団/お洋服/お土産/お花/お買い物/お化粧品…
場所お手洗い/お台所/お便所/お部屋/お家/お風呂/お玄関/お庭/お池/お外/お空/お教室/お墓
お寺/お座敷/お食事処… ※おトイレ
お体/お口/お鼻/おなか/お尻/おへそ/お顔/お肌/お熱/お通じ…
漢語お洗濯/お掃除/お化粧/お稽古/お食事/お料理/お勉強/お給料/お献立/お勘定/お正月
お行儀/お歳暮/お節介/お葬式/お夕飯/お天気/お散歩…
その他おもてなし/お礼/お祝い/お返し/お見合い/お相手/お昼/お願い/お使い/お申し込み
お知らせ/お持ち帰り/お付き合い/お問い合わせ/お出迎え/お見送り/お値段/お料理
お線香/お加減/お散歩/お誕生日プレゼント/お徳用/お得/お会計/お勘定/お愛想/お稽古…
「お」が付く和語 (※一部で使う)

言葉によっては、同じ言葉で尊敬の意味になる場合と、謙譲の意味になる場合があります主語が「相手又は第三者」であれば尊敬の意味になります。主語が自分であれば、謙譲の意味になります。

言葉敬語の種類例文
連絡尊敬わざわざご連絡頂き、ありがとうございます。
謙譲私からお客様にご連絡いたします。
美化語お手紙セット(便箋・封筒入り)
お知らせ尊敬わざわざお知らせ頂き、ありがとうございます。
謙譲私からお客様にお知らせいたします。
美化語今月の水道料金のお知らせ
回答尊敬早々に、ご回答頂きありがとうございます。
謙譲明日までにご回答いたします。
お答え尊敬早々に、お答え頂きありがとうございます。
謙譲明日までにお答えいたします。
報告尊敬ご報告いただいた件の状況の確認をいたしました。
謙譲進捗状況をご報告いたします。
確認尊敬日程をご確認ください
謙譲お客様の登録状況をご確認いたします。
対応尊敬迅速なご対応ありがとうございます。
謙譲私がご対応いたします。
おもてなし尊敬心のこもったおもてなしを頂き、誠にありがとうございました
謙譲大したおもてなしもできず大変申し訳ございません
美化語日本人のおもてなし
同じ言葉で意味が尊敬語・謙譲語になる例文

⑤ 労い・慰めの意味の「お/ご~~様(さん)」

日本語には、「お/ご~~様(さん)」の形の、
労い・慰めの言葉があります。会社でよく使う「お疲れ様・お疲れ様です」「ご苦労様(さん)」が、それです。最近は、あまり聞かなくなりましたが、「お世話様です」もあります。

「お世話様です」の意味は、「お世話になっています」の意味と同じです。使い方は、「ご苦労様(さん)」と同じ使い方で、目上の人が目下の人を労う表現です。

私は、荷物の配達を受け取ったとき、挨拶言葉として使います。

⑥ 親愛の意味の「お/ご~~様(さん)」

日本語の名称に「お母さん(様)」「お父さん(様)」がありますが、この「お~~さん(様)」の形は、この他にも「お医者さん」や「お巡りさん」「お巫女さん」「おかみさん」のように、その仕事に付く人の名称としても使います。「お巫女さん」は神社で神事などで、神役を果たす女性の名称です。「お女将さん」は、料理屋・旅館などの女主人の名称です。「お巡りさんは」は警察官をいいます。

職業に関する名称で、「お」が付かない「ー駅員さん」「ー店員さん」「美容師さん」「飼育員さん」「事務員さん」なども名称もよく使います。

以前は、女性の呼び名によく「お~~さん」を使っていました。女性の下の名前が「はるこ」の場合「おはるさん」、「たかこ」の場合は「おたかさん」と呼んでいました。私は「かずよ」なので「おかずさん」と呼ばれたと思います。

今もよく使う名称に「お嫁さん」「お婿さん」「お子さん」「お嬢さん」「お地蔵さん」「お偉いさん」など、たくさんあります。「さん」は「様」にもなります。これらの名称は、軽い尊敬、親愛の意味を表す名称です。ただ、「お偉いさん」は場合によっては、からかいや皮肉の意味になることもあります。

お得意さま/お一人さま/お隣さん/お向かいさん/お姑さん/お孫さん/おバカさん…
職業お手伝いさん/お坊さん/お百姓さん/お相撲さん…
軽い尊敬・親愛の気持ちの表現「お~~さま/さん」

⑦ からかい・皮肉・などの意味の「お」

「熱い」に「お」を付けて「お熱い」という言葉があります。最近でいう「ラブラブ」の意味です。仲のいいカップルに「お熱いですね~/お熱いね~~」ということがあります。軽いからかい、ひやかしの言葉です。

この他に「めでたい」に「お」が付いた「おめでたい」という言葉があります。「めでたいは」は、「喜ばしい・素晴らしい」などのポジティブな意味を持ちますが、「お」をつけて丁寧にすると、「お人よしである」「人がよすぎてだまされやすい」という意味になります。「おめでたい奴(人)だ」というと、「あきれる」の意味を含んで良い評価の意味にはなりません。

この他にも、「お調子者」「お天気屋」「お荷物」などの「お」が付く言葉がありますが、敬意を表す「お」ではありません。

⑧ 本来の美化の意味がなくなった「お」

「お/ご」を付けて、言葉を美化する役割であったものが、だんだん1つの言葉として認識されるようになった言葉もたくさんあります。なので、美化語として使うのではなく、言葉としての感覚で使っています。

そのため「お」を取ってしまうと意味が通じなかったり、別の意味の言葉になります。例えば、「おかず」は、「かず」といっても通じません。「おむすび」は「おにぎり」と同じ意味ですが、「むすび」といっても通じません。この他にも「おやつ」「お陰」「お好み焼き」「お茶」「お袋」「お洒落」「おしぼり」「お参り」もそうです。

おにぎり

にぎり

日本語は、お店にも「お」を付ける?

「お洋服屋さん」「お菓子屋」「お肉屋さん」「おそばやさん」など「お~~屋さん」とおいう形にした言い方があります。この他にも、「お」が付かない「パン屋さん」「ケーキ屋さん」「クリーニング屋さん」もあります。外来語には「お」「ご」が付かないので、「~~屋さん」になったんだと思います。擬人化した表現の一つになると思います。

この他、お店に付く「お」以外にも、子供の絵本などでは、擬人化された「お~~さん(様)」がたくさん出てきます。あらためて、擬人化された言葉の多さにビックリしました。

お店お弁当屋さん/お惣菜屋さん/お花屋さん/お引越し屋さん/お寿司屋さん/おそば屋さん
おうどん屋さん…
自然物お日様/お天道様/お月様/お星様…
人型・動物お人形さん/お地蔵様(さん)/おひな様/おだいり様/おさるさん/
軽い尊敬・親愛の気持ちの表現「お~~さま/さん」

「ご」「お」が付かない言葉

「ご」「お」が付く、付かない基準は、まだ明確なものはないようです。ただ、私が読んだ資料では、
名詞においては、長くない言葉・日常でよく使う言葉・「お/ご」が漢字となじむ言葉に「お/ご」が付いているそうです。これと反対に、長い言葉、例えば「一生懸命(いっしょうけんめい)」のような長い言葉や、日常でよく使わない言葉「辞典」のような言葉や、「運動・運転」のような「お/ご」がなじまない言葉には、「お/ご」が付きません。

形容詞の場合は下記の説明が一番わかりやすかったです。↓いろいろな資料を読みましたが、一番わかりやすい説明でした。

「お/ご」が付かない場合
1. 外来語 例)おシンプル/おコーヒー/おピザ
2. 「お」で始まる語 例)おいしい/おもしろい/おかしい…
3. 文字数が多い 例)一生懸命/あたたかい/だいじょうぶ/すばらしい
4. 下品・悪感情の言葉 
5. 色・自然などの

村田志保 「形容詞の敬語表現と接頭辞「お/ご」の関係性について」P124

「お・ご」は美化語としての使用頻度が一番高いです。まずは、美化語を意識してみてはどうでしょうか。

まとめ

「お/ご」の存在は、はじめはそれほど気にならないと思いますが、ビジネス会話などの日本語学習をするようになると、難しさを感じるのではないでしょうか。

「お/ご」は、会話にも書き言葉にも使います。仕事で使う言葉は、その業種でだいたい決まってくるので、会話と書き言葉でよく使う物から整理してみてはどうでしょうか。

今回、「お/ご」に関して深掘りしてみましたが、なかなかうまくお伝えできませんでした。日本人の私も、簡単ではありません。なので、外国人のみなさんに、なおのこと難しいはずです。

ただ、難しく思わず楽しく日本語の「お/ご」に関心を持っていただければと思います。皆さんの日本語Skillupを楽しんでください~~。

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