目上の人には「~たら」をアレンジして使った方がいい!

日本語勉強

文型「たら」をすでに勉強した方も多いと思います。「~たら」そのものは、意味も使い方も簡単な方だと思います。ただ、<丁寧な言い方シリーズ②>で紹介した「~なら」や、「~と」「~ば」との使い分けが、紛らわしいはずです。日本の隣の韓国は、「~たら」「~なら」「~と」「~ば」が1つの言葉で表現されるので、日本語にする場合は4つのパターンに使い分ける必要があります。

この「~たら」「~なら」「~と」「~ば」の使用頻度を考えると、私の個人の感覚ですが、4位が「~なら」3位が「~れば」2位が「~と」1位が「~たら」なのではないかと思います。この順位は私生活全般の順位ですが、職場の使用頻度だけで考えると、1位の「~たら」の使用頻度は、グッと下がります。

「~たら」は「~なら」と同じくカジュアルな表現なので、お客様や、ビジネス相手、先生などとの会話には不向きです。「~たら」は、使いやすい表現ですが、丁寧さに欠けるわけです。

<丁寧な言い方シリーズ③>では、①「~たら」の2つの意味と特徴 ②「~たら」の丁寧な言い方、③「~たら」の言いかえ、④「~たら」が使えない表現をご紹介しようと思います。

「~たら」の2つの意味

「たら」の意味は2つです。①仮定表現と、②発見表現です。
仮定表現とは、未定なこと、不確かなことを前件に仮に定める表現です。後件には、その場合に依存して起こることをいいます。例えば、「雨が降ったら、試合は中止です」です。雨が降ることは、未定なこと、不確かなことですが、仮にそう定めます。そして、その場合に依存して起こることは、試合中止です。このような表現を仮定表現といいます。

仮定表現には「仮定条件」と「確定条件」の2つがあります。
仮定条件:「雨が降ったら、試合は中止です」雨が降ることを仮定した表現。
確定条件:「午後になったら、出発しよう」必ずくる「午後」を仮定した表現。

雨は時間を決めて降るものではないので、雨が降ると仮定して言います。これを仮定条件といいます。仮定条件は、「~ば」に言い換えることができます。「雨が降れば、試合は中止です」

確定条件は、時間のような定期的に必ず巡ってくることを仮定した表現をいいます。確定条件は「~ば」に言い換えることができません。

仮定表現「たら」の特徴は、繰り返しのない1回きりの仮定表現が典型的な使い方です。その場、そのときに限るころを仮定した表現に一番お似合いの表現です。

「発見表現」は、「AたらB」として、Aをした結果、Bを発見した、Bが成立したというときに使います。すでに起こった事実的な条件を表します。AとBの行為には、まったく関連性はありません。偶然な結びつきです。
例えば、「トンネルをぬけたら、そこは雪国だった」「家に帰ったら、合格通知が届いていた」「窓を開けたら、蚊が入って来た」といった表現です。

この「発見表現」は「~と」に言い換えることができます。「トンネルをぬける、そこは雪国だった」「家に帰える、合格通知が届いていた」「窓を開ける、蚊が入って来た」

「たら」の意味は、以上2つです。「たら」は一部を除いて、ほぼすべての仮定表現に使えます。後件に意思・希望・命令・依頼などがくる表現も制限なく使えます。

★「~と」は、後件に「意思・希望・命令・依頼など」の表現ができません。
例)春になると、旅行がしたいです。✖
★「~ば」は、後件に「意思・希望・命令・依頼など」の表現ができません。ただし、①前件の述語が状態性を持つ述語の場合は可能です。
例)機会があれば、アメリカ旅行がしたいです。〇
  よろしければ、ご出席いただけませんか。〇
②前件と後件の主語が違うときは可能です。
例)母が許してくれたら、日本で働くつもりです。〇

「~たら」以上寧な言い方

「~たら」の丁寧な言い方は、「でしたら」「ましたら」にすることができます。「たら」の「た」は過去の普通形なので、過去普通形を過去丁寧形にして「ら」を付ければいいわけです。

「でしたら」「ましたら」は、接客する場や、商品説明、案内などをする場などで多く使います。「んだったら」の表現もありますが、これも同じように「んでしたら」にすることができます。

繰り返しのない1回きりの仮定表現を丁寧に表現するんのにいいです。

予約のキャンセルがでたら、連絡します。(仮定条件)
 →予約のキャンセルがでましたら、ご連絡いたします。

15時になったら、定例会議をはじめます。(確定条件)
 →15時になりましたら、定例会議をはじめます。

時間になったら、案内します。(確定条件)
 →時間になりましたら、ご案内いたします。

・お客様に案件を提案したら、反応がよかったです。(発見)
 →お客様に案件を提案しましたら、反応がよかったです。

わからないことがあったら、いってください。(仮定条件)
 →ご不明な点がございましたら、おっしゃってください。

特徴を活かした「~たら」の言いかえ

「~たら」を他の仮定表現「~と」「~ば」に言い換えて使うこともできます。「~たら」よりも「~と」「~ば」の方が丁寧感がでます。「~と」に関しては、「~ですと/ますと」の言い方もあります。ただ、ここが日本語学習者にとっては、難しところだと思います。それぞれの特徴を活かした仮定表現をご紹介します。

「~たら」から「~と」への言い換え

「~と」の特徴は、いつも同じように繰り返し成立する関係を表します。「~Aと、~B」とした場合、Aが起こると、いつもBが起こるという関係です。自然現象や機械の操作、道案内、習慣などがそうです。ですから、後件Bに「意思・希望・命令・依頼など」の表現がくることはありません。

自然現象や機械の操作、道案内、習慣の表現は、「~たら」でも表現できます。ただ、「~と」の方が特徴が活かされた表現にもなるし、「たら」よりも丁寧さが出ます。なので、丁寧さを出したいときは、「~と」もしくは、「~ですと/ますと」にすればいいです。

・春になったら、花が咲きます。(自然現象)
春になると、花が咲きます/春になりますと、花が咲きます

・ここをまっすぐ行ったら、上野公園です。(道案内)
→ここをまっすぐ行くと、上野公園です/ここをまっすぐ行きますと、上野公園です

・子供は、船に乗ったら、いつも酔います。(習慣)
→子供は、船に乗ると、いつも酔います

・ここを押したら、きっぷが出ます。(機械操作)
→ここを押すと、きっぷが出ます/ここを押しますと、きっぷが出ます

・身長が130センチ未満だったら、乗れません。(習慣的な事項)
→身長が130センチ未満だと、乗れません/身長が130センチ未満ですと、乗れません

「~と」は、後ろに意思・希望・命令・依頼などの表現がまったく使えないので、後ろにこれらの表現がくる場合は、「~と」は使えません。
・時間になったら、退出してください。
→時間になりましたら、退出してください/時間になりましたら、ご退出ください 〇
 時間になると、退出してください/時間になりますと、退出してください ✖

他にも、先にも挙げたこの「発見表現」にも使えます。
トンネルをぬける、そこは雪国だった
家に帰える、合格通知が届いていた
窓を開ける、蚊が入って来た
「発見表現」は、「と」のもつ仮定性が薄まります。前件と後件は別々のことですが、前件の動きの結果が後件に結び付く関係です。この発見表現は「たら」にもあります。丁寧さを出すときは「でしたら/ましたら/と/ですと/ますと」にすることもできます。

「~たら」から「~ば」への言い換え

「~ば」の一番大きな特徴は、後件の成立のための仮定条件表現です。「AばB」とした場合に、Aの条件が成立すれば、Bが成立するいうAに焦点を当てた表現です「タクシーで行けば、間に合います」は、「タクシーで行く」というA条件が成立すれば、「間に合う」というBが成立します。「間に合う」というBを成立させるには、「タクシーで行く」という条件Aが必要です。このような仮定表現には「ば」がもっとも適しています。
例)
今、申し込めば、参加できます。
安くすれば、売れます。
リハビリをすれば、歩けるようになります。


「~ば」はそのままでも、丁寧感があります。尊敬語にして「ば」を付けることもできます。

例)
今、お申し込みになれば…..
お安くなされば…..
リハビリをされれば、歩けるようになります。


「~ば」の後件には、望ましいことがきます。望ましくないことには使いません。
例)「タクシーで行けば、間に合いません ✖

「~ば」の特徴はこの他にも、ことわざに代表する一般法則や、前件に「さえ」を伴って、後件の最低条件を表現することもできます。
例)
ちりも積もれば山となる。
お金さえあれば、すべて解決できる。

「~たら」が使えない表現「乗るなら飲むな」

仮定表現で「たら」は広範囲で使えますが、使えない場合があります。「なら」で表現される一部が「たら」では使えません。

「AならB」で考えた場合、
その行動の流れが、AからBではなく、BからAになるもの。例えば、「日本に旅行するなら、日本語を少し勉強した方がいいです」は、先に日本語を勉強して(B)、それから、日本旅行します(A)。この場合「なら」は「たら」に置き換えることはできません。
・日本に旅行したら、日本語を少し勉強した方がいいです。✖
・日本に旅行したら、日本語が少しわかるようになります。〇(A→B)

「医学に進むなら、この本は必読だ」も同じく、本を読む(B)、それから、医大に進む(A)の流れです。ですから「たら」は使えません。この表現は「なら」しか使えません。
・医大に進んだら、この本は必読だ。✖
・医大に進んだら、この本を読みましょう。〇(A→B)

もし、「日本に旅行するなら、日本語を少し勉強した方がいいです」が「日本に旅行するのなら、日本語を少し勉強した方がいいです」「日本に旅行するんなら、日本語を少し勉強した方がいいです」の場合は、「のだったら/のでしたら」「んだったら/んでしたら」が可能です。

「医大に進むのなら、この本は必読だ」「医大に進むんなら、この本は必読だ」
「医大に進むのでしたら、この本は必読です」「医大に進むんでしたら、この本は必読です」

関連記事:<丁寧な言い方シリーズ②>~なら(ば)…

まとめ

今日は「~たら」の2つの意味と特徴 と、「~たら」の丁寧な言い方、「~たら」の言いかえ、「~たら」が使えない表現をご紹介しました。書いてている私も頭がおかしくなりそうです。うまくまとめてお伝えすることが簡単ではありません。笑笑

仮定表現が日本語では「たら」をはじめ「と」「ば」「なら」があって、この他にも「~の場合は」などの形でも表現できます。日本語学習者の方にとっては、紛らわしい文法だと思います。伝える私も必死で書きました。

何か不明な点があれば、コメントください~~。誠心誠意お答えします。

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